Zense Past Life

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Past Life Hiragana Lyrics


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Past Life ひらがな リリクス

め の まえ に は ばこ が ある。
てのひら に おさまる ほど の、 かど の とれた りっぽう たい で、
なか に なん が はいって いる か は けんとう が つかない。
あし で つきころがして みる と、 なん か の おと が きこえた。
もう いち ど ころがして みみ を そばだてる と、 りんと した すず の おと が ざんきょう して、 たしか に なって いる。
やけ に よどみ の ない おと が して いた。
なるほど、 どう やら ばこ に は すず が はいって いる。

ばこ なら ば、 とうぜん ふた が ある はず だ。 あし で ころがして すみ まで かくにん する もの の、
どう も ふた の ひらく よう の しかけ は みつからない。
くち を ひらき、 ばこ に は を つきたて、 ちから を こめて かじりつく。
ひらかない。 ひらかない の で また かじる。
かじる たび に すず の おと が なり、 それ が また きたい かん を あおる。

これ ほど に よく なる すず だ。
ぞんがい みて くれ も すばらしい に ちがい ない。
噛 り、 かじり、 ころがし、 噛 り、 すず が なる。 すず が なれ ば また かぶりつく。
かじれ ば なる。

どれ ほど の じかん が たった の だろう か。
がん と して ばこ は ひらかず、 あれ だけ ちから を こめた の に きず ひと-つ ひょう めん に のこして は いない。
この まま で は いたずら に あご を ひへい させる だけ だ。
ばくぜん と そう おもった。
ようやく あきらめ の ついた ころ、 さげた めせん の さき に すな で よごれた まえあし が め に はいった。
ふと、 むかし

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Past Life Romaji Lyrics

me no mae ni wa bako ga aru.
tenohira ni osamaru hodo no, kado no toreta rippō tai de,
naka ni nan ga haitte iru ka wa kentō ga tsukanai.
ashi de tsukikorogashite miru to, nan ka no oto ga kikoeta.
mō ichi do korogashite mimi o sobadateru to, rinto shita suzu no oto ga zankyō shite, tashika ni natte iru.
yake ni yodomi no nai oto ga shite ita.
naruhodo, dō yara bako ni wa suzu ga haitte iru.

bako nara ba, tōzen futa ga aru hazu da. ashi de korogashite sumi made kakunin suru mono no,
dō mo futa no hiraku yō no shikake wa mitsukaranai.
kuchi o hiraki, bako ni ha o tsukitate, chikara o komete kajiritsuku.
hirakanai. hirakanai no de mata kajiru.
kajiru tabi ni suzu no oto ga nari, sore ga mata kitai kan o aoru.

kore hodo ni yoku naru suzu da.
zongai mite kure mo subarashī ni chigai nai.
ri, kajiri, korogashi, ri, suzu ga naru. suzu ga nare ba mata kaburitsuku.
kajire ba naru.

dore hodo no jikan ga tatta no darō ka.
gan to shite bako wa hirakazu, are dake chikara o kometa no ni kizu hito-tsu hyō men ni nokoshite wa inai.
kono mama de wa itazura ni ago o hihei saseru dake da.
bakuzen to sō omotta.
yōyaku akirame no tsuita koro, sageta mesen no saki ni suna de yogoreta maeashi ga me ni haitta.
futo, mukashi

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Past Life 漢字 リリクス

目の前には箱が在る。
掌に収まるほどの、角の取れた立方体で、
中に何が入っているかは見当がつかない。
足で突き転がしてみると、何かの音が聞こえた。
もう一度転がして耳を欹てると、凛とした鈴の音が残響して、確かに鳴っている。
やけに淀みのない音がしていた。
成る程、どうやら箱には鈴が入っている。

箱ならば、当然蓋が有る筈だ。足で転がして隅まで確認するものの、
どうも蓋の開くようの仕掛けは見つからない。
口を開き、箱に歯を突き立て、力を込めて噛り付く。
開かない。開かないのでまた齧る。
齧るたびに鈴の音が鳴り、それがまた期待感を煽る。

これ程に良く鳴る鈴だ。
存外見て呉れも素晴らしいに違いない。
噛り、齧り、転がし、噛り、鈴が鳴る。鈴が鳴ればまた齧り付く。
齧れば鳴る。

どれ程の時間が経ったのだろうか。
頑として箱は開かず、あれだけ力を込めたのに傷一つ表面に残してはいない。
このままでは悪戯に顎を疲弊させるだけだ。
漠然とそう思った。
ようやく諦めのついた頃、下げた目線の先に砂で汚れた前足が目に入った。
ふと、昔、自分が人間だった頃のことを思い出した。

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